朝日新聞がLCC航空券の転売を取り上げる

大手マスコミでは初めてLCCの転売事情を取り上げた記事だと思います。
LCC航空券ネット転売、後絶たず 売り主名のまま搭乗:朝日新聞デジタル

日本の国内線にLCCが参入した途端に転売は活発化したので今更感がありますが、やはりピーチのあのフライトがターニングポイント。
ピーチの関空-成田初便チケットがハンパない | Help Point
多くの方がヤフオク等で転売されるLCCの航空券の存在を知ったきっかけになったかと思います。

なぜLCCのチケットは転売されるのか

ピーチのこの件は例外ですが、LCCのチケットが転売されるには理由があります。
・キャンセルをしても基本的に返金されない
これはLCCのビジネスモデル上、仕方がない事。
数千円~数万円で予約した航空券。1円でも良いから回収しようと思うのは当然かもしれません。
一部LCCはキャンセルをすると支払った金額をバウチャーとして返金してくれるサービスや、高額な手数料を支払うと返金してくれる場合もありますが、国内では当てはまりません。

・セールで仕入れた航空券は高く売れる
LCCは稀に宣伝を兼ねて1000円以下で航空券を販売します。
これが5000円、下手すると1万円以上で売れるわけです。
ダフ屋がいるくらいですから、これで稼ごうとする人も出てきますね。

しかしLCCの事情はどの国も同じ。
なぜ日本だけが問題なのでしょうか。

日本と世界の危機意識の差

朝日新聞の記事では、他国の国内線では本人確認をすると書いてあります。
他人になりすましての搭乗は許されるのか。米国やフランス、韓国の主要航空会社は保安上、国内線でも搭乗時に本人確認がある。2001年の米同時多発テロ以降、強化したという。仏エールフランス航空の担当者は「乗る人の身元を把握できないのは危険で、ありえない行為」と話す。
LCC航空券ネット転売、後絶たず 売り主名のまま搭乗:朝日新聞デジタル
書いてある通り間違いなく、日本以外の大多数の国は国内線搭乗時に身分証明書の確認を行っています。

世界各国で飛行機搭乗時に身分証明書を確認するようになったのは、911がきっかけと言われていますが、飛行機は他の公共交通機関と比べテロの標的にされやすく、最も警備が厳しい交通機関。
その対策として身分証明書の確認をするのはごく普通の事。

しかし治安が良く、テロとは無縁の日本では海外での常識は通じません。
私1度ヤフオクで買ったジェットスターの航空券で旅行に成功しました。確かにホームページには、オークションで購入した航空券では乗れないと書いてあるが、それは建て前上の話。違う名義人でもその人になりきれば私はうまくいきました。
LCCのジェットスターの格安航空券を他人に譲ることはできますか? - Yahoo!知恵袋

これを書いた方は自分が悪いことをしているとはまったく思っていないはず。
バカ正直に旅はしないのが私の「ルール」
ここまでくるとカッコいい。

日本とオーストラリアの違い

一方、先進国で国内線搭乗時に身分証明書の確認を義務付けていない国があります。
それがオーストラリア。

しかしオーストラリアでは、転売されたチケットをネット上で目にする事はありませんし、大きな問題になってはいません。
この日本とオーストラリアの差が、危機意識や制度によるものです。

オーストラリアでは重大なテロが発生していないにもかかわらず、イスラム過激派にアングロサクソン諸国の一つとして狙われており、国民もそれを十分理解しています。

また、オーストラリアの刑法では飛行機に偽名で乗るのは犯罪です。
376条1項~5項にかけて偽名や虚偽の情報を使用して飛行機に乗ることを禁じています。
違反者には最大で1年の懲役が課せられます。過去には実際に逮捕者もいます。

CRIMINAL CODE ACT 1995 - SCHEDULE The Criminal Code

一方の日本はそういった法的な規制もなく、転売を各航空会社の約款で禁止し、違反者に最も高額な運賃の2倍相当額を罰則金として取るだけです。

問題の根底は何か

このブログでは何度もオークションで転売される航空券を取り上げてきました。
オークションに出品されているLCCの航空券を考える
ピーチのオークションをアホみたいに何度も取り上げたのも、航空会社側が何らかの対策を取ってくれないかという意味を込めて書きました。

個人的には転売を規制をするのではなく、オーストラリアのような法整備や航空会社側が対策を取るのが手っ取り早いと感じています。
そう考えると航空会社が身分証明書を確認することが今できる最も簡単な方法では無いでしょうか。

難しいのは普段身分証明書を持ち歩かない日本人にそれを徹底させること。
免許証もパスポートも住基カードも持っていない人だっているでしょう。
もしそれらの身分証明書が無いと飛行機に乗れません、となった時の反発は大きいはず。

しかしLCCであれば、それが受け入れられるのではないかな・・・と期待していました。
安いんだから、多少の手間は利用者に受け入れられはしかいかと。

実際はジェットスターが他社よりも多くチェックしているくらいで、バニラなんて聞いたこともないですね。
日本では本人確認は義務付けられていない。保安検査場での手荷物検査で爆発物などを持ち込んでいないか確認しており、「セキュリティー上の問題はない」(国交省の担当者)という。
確かにセキュリティー上は問題ないでしょう。ではなぜ日本以外の国ではチェックをしたり法整備をしているのでしょうか。
あるLCC関係者は「職員が搭乗者全員をチェックするのは、物理的に難しい。利用者の利便性の問題もある」と話す。
海外のLCCには日本のLCCよりも短時間で折り返しをしつつ、きちんと身分証明書の確認をしている会社が多数あります。物理的に難しいわけがないですね。



現実には2014年に入ってから、オークションで売られているLCCの航空券は出品・入札共に減少傾向で、落札価格も下落傾向。

オークションで転売されている航空券にリスクがあるということが周知されてきたのかもしれません。

この記事のはてブやtwitterのコメントを見ると、多くの人が本人確認を必要性を感じています。
一方、本人確認をしないで楽に搭乗できる利便性を捨てたくないという人も。
大きな事故で補償受けられないとかテロが起きてからやっと動き始める事案だったりするのかもね。
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何か起きてからでは遅い!と自分も常日頃思っていますが、セキュリティ上の問題は無いということなので、とりあえず国交省の方を信じてこれからも飛行機に乗りますよ!