"私の街にもLCC飛んでー!"なんて声で溢れると思いきや、ピーチ以外の経営状況はあまり良くなく、そのピーチでさえも世間を賑わす事件やパイロット不足が深刻と、波瀾万丈な日本のLCC。
未だにLCCを利用したことがない人は多いですし、一度利用してもう利用したくないと思っている方も少なくないのが日本の現状。ヘビーユーザーだけは増える一方ですがw
とは言え、日本の47都道府県のうち30以上都道府県には空港があり、この3年で15以上の空港にLCCが就航しています。いつかはあなたの街にもLCCが就航する可能性があるわけです。
そこで日本の地方空港のLCC誘致情報をまとめてみます。
とは言え、ほとんどは水面下で行われているので、今回ご紹介するのは大した情報では無いことを先に明記しておきます。
あくまで公表されていることをベースに、親しい関係者からの情報をまとめただけです。
尚、本来は空港別に紹介するのが正しいかと思いますが、日本の地方空港は基本的に地方自治体が運営しているため、県別でのご紹介。基本的に国内線が主です。
また、LCCが主に運用しているA320やボーイング737でも離着陸が十分可能な滑走路の長さ、2000m以上の滑走路がある空港に絞り、調べるのが面倒になった空港は省いています。
北海道
新千歳は成田・中部・関西を除くと最もLCCの国内線便数が多い空港。LCCの恩恵を最も受けているエリアの一つと言えるでしょう。
そのため、道内の多くの空港でLCCを誘致しようという動きがあります。
例えば有識者を招いてLCCフォーラムやLCC懇親会というのが道内各地で開催され、国内はもちろん国外のLCCに対しても積極的にアピールをしているようです。
函館市ではLCCに対してこのような回答をしています。
函館にLCCを | 函館市
これまで、各会社への訪問を行うなど、様々な情報収集に努めるとともに、北海道が実施した「LCC航空需要拡大事業」に参加するなど様々な取り組みを行ってきており、今後におきましても、関係機関との連携のもと、LCCの新規就航に向けた取り組みに努めてまいりたいと考えております。近年では道内地方空港に国外のLCCが実際に就航したり、就航を考えているといった話が出ており、アジアの北海道ブームをどのように取り込むかが重要でしょう。
交通政策局のページ(総合的な交通施策の推進)
青森県
三沢空港は厳しいとしても青森空港はどうでしょうか。県がLCCの誘致等について回答しています。
格安航空会社(LCC)について - 青森県庁ホームページ
LCCは、低料金で利用できるといったメリットがあるものの、運航に係るコストを抑えるため、空港使用料や着陸料の減免を求めるケースもあると聞いており、また、現在の就航先が札幌、福岡等航空需要が非常に大きい空港を中心に計画が進められていることから、課題も多い保守的な回答かなと。ソウル線は様々な助成を県自らが行っているのに着陸料の減額は嫌がっているように感じてしまいます。
岩手県
積極的な誘致は行っていないようです。秋田県
秋田空港と大館能代空港がありますが、運営しているのはどちらも秋田県。県はこのように回答しています。
県民の声 -美の国あきたネット [秋田県公式サイト]
低運賃であるLCCは、より安定的な需要が求められるため、現在、国内LCC会社の就航路線は、関西空港や成田空港を拠点に札幌、福岡、那覇など交通需要の大きな路線が中心であり、ご提言のLCCの就航には、本県の需要を一層高めていく必要がある秋田は需要が無いので厳しい。積極的な誘致はせず、まずは需要を高めるキャンペーンを行っていく。そういうことでしょう。
宮城県
仙台空港にはすでにピーチが関西線を開設済みで、国内トップクラスの搭乗率を維持し続けています。しかしそれ以外の路線は音沙汰なし。
LCCを積極的に誘致した結果ピーチの就航が実ったとお聞きしましたが、様々なLCCが就航するのは民営化後かもしれません。
県知事がゴールドコーストを視察したりと好意的ですし、仙台空港がLCCの拠点になるように取り組んでいくようなので、今後に期待。
山形県
山形空港と庄内空港がありますが、これといった情報なし。福島県
福島空港には以前イースター航空がチャーターながら運航。しかしその後は音沙汰なし。
LCCを誘致しているとは言われていますが、仙台や茨城空港も遠くなく実現は厳しいでしょう。
茨城県
LCCを誘致したいはずの茨城空港ですが、やる気があるのか無いのか。未だに春秋航空だけという現状で、最近はスカイマークにてんやわんや。
東京都
羽田、成田を除くと可能性がありそうな伊豆諸島。特に滑走路が長い八丈島空港は可能性があるかなと思い調べたものの、資料一切なし。
長野県
松本空港はフジドリームエアラインズが拠点にしているので、わざわざ誘致しなくても・・・という考え方が見え隠れします。県民の声に対し担当者は以下のように回答。
長野県 県民ホットライン(知事へのご意見)過去のデータ
松本空港は、標高が高く空気密度が低いことから十分な揚力を得られないとして、大型機の就航が難しいなど、航空機の運航に当たりまして多々制約があります。これらの制約により、多頻度運航かつ大量輸送による低価格運賃をビジネスモデルとするLCCの松本空港への就航は、残念ながら大きな困難が伴うものと予想されます。
新潟県
新潟空港にLCCを誘致するという方針は2012年から変わっておらず、2014年に県が配布した資料でも、LCC誘致に取り組んでいくことが書かれています。それ以外は不明。
富山県
富山空港にLCC誘致を表明しているものの、目立った動きなし。石川県
石川県が運営している能登空港は動きなし。小松空港も同様。
富山空港も含め北陸新幹線開業で大幅な利用者減が予想される訳ですが、果たしてどうなるのか。
静岡県
比較的好調な静岡空港ですが、LCCに関しては不明。和歌山県
南紀白浜空港にLCCを誘致する気がないのか、今は関空からのおこぼれに湧いている和歌山県。JALの羽田線なんて廃止して、さっさとジェットスターが飛ばせば良いと勝手に思っている空港です。
和歌山県産の桃をピーチにPRして貰って喜んでいる場合じゃないですよ?
兵庫県
LCCを誘致できるポテンシャルはあるのに、スカイマーク頼みだった神戸空港。関空にLCCが数多く就航し、神戸空港の利用者は減る一方。挙句のスカイマークの件。
運営している神戸市の以前の市長は"LCCは荷物を預けるのが有料ですし結局神戸空港を利用した方が安いということアピールしなければ!"なんて言っていたそうですが、そんな事を言っている間に隣の空港は大変なことになっています。
今後、LCCを誘致するかは全く不明。
岡山県
近くの高松空港や広島空港にはLCCが就航しているのに少し寂しい岡山空港。チェジュ航空とイースター航空がチャーター便で乗り入れた実績があるものの、その後音沙汰なし。
積極的に誘致はしているという話ですが、実際に就航を表明したLCCは無い状況です。
広島県
LCCを誘致していると言ったものの、目立った動きが無かった広島空港。ところが2014年に春秋航空日本が広島空港に就航し、今では主要な路線として運航されています。
さぞ県が素晴らしい誘致でもしたかと思いきや、春秋航空日本に出資しているJTBのグループ企業"中国ターミナルサービス株式会社"がANAのハンドリング業務をしている関係で就航できたという見方が大半。
広島空港ではANAの制服を着た方が春秋航空日本の対応をしていますよね。納得。
そもそも広島空港は立地上天候が悪く、ILSの高カテゴリーに対応できないLCCは就航が難しいと言われていました。が、実際に春秋航空日本が運航してみるとそれほど欠航や遅延が無いようなので参入してくるLCCは今後増えるかもしれません。
山口県
山口宇部空港と岩国空港がありますが、まったく動きがわかりません。鳥取県
鳥取空港と米子空港がありますが、これといった動きなし。米子空港からスカイマークが撤退するので、積極的に誘致する?
島根県
出雲空港と石見空港、そして隠岐空港がありますが、運営する島根県の回答は以下の通り。島根県:LCCの招へいについて(トップ / 県の取組み・一般 / 政策・財政 / 広聴・広報 / 県民ホットライン / 今までにいただいたご提案と回答 / 2012年3月)
島根県:米子空港へのLCC就航決定を受けて(トップ / 県の取組み・一般 / 政策・財政 / 広聴・広報 / 県民ホットライン / 今までにいただいたご提案と回答 / 2013年10月)
格安航空会社は、経営の効率化を図り、需要の高い路線に定期運航することでより低い運賃を実現していることから、収益が見込めないと判断した場合、撤退も早いと言われています。他の空港の例では、就航したものの1年以内に運休した事例も多くあります。そのため、一定の需要が継続的に確保されない場合には早々の運休、あるいは、競合すると見込まれる既存路線の減便も予想されます。慎重です。東北の某県と非常に似ています。
このため、誘致にあたっては、どこと結ぶのか、定期便として継続していけるための需要があるかなど十分な検討が必要であり、社会情勢や観光の動向、航空会社の経営計画などを絶えず注視していきたいと考えています。
LCCが飛んだところで、それに見合った需要が見込めなければ直ぐ撤退。
県がお金をかけても逃げられるようであれば、最初から無理な誘致は避けよう・・・という事でしょう。
現にお隣の空港ではLCCでは無いもののスカイマークが撤退。今頃"予想通りwww"と関係者が思っていても不思議ではありませんw
徳島県
徳島空港と高松空港の距離が近いこともあり、既に高松空港を発着するLCCを利用している徳島県の方もある程度いるんだとか。県としてはJALとANAでそれなりの便数もあるし、料金も比較的安め。無理に誘致するよりも、現状維持が妥当じゃない?というところでしょうか。
目安箱 | 徳島県
LCCを使いたいならどうぞ高松空港へ。
それも一つの考え方でしょう。
香川県
ジェットスターと春秋航空日本、及び春秋航空が就航している高松空港。四国ではジェットスターの松山就航が最初でしたが、松山就航から1か月後の県の回答は以下の通り。
香川県 ご提言等の内容 ~ 格安航空便について
LCCが就航した場合、新たな利用者層の開拓や近隣各県からの広域利用の拡大など、需要の底上げも期待できることから、新規路線の誘致にあたっては、LCCも含めて積極的に働きかけを行っているところです。ジェットスターの松山線就航から遅れること約半年。
見事就航。
やはり誘致している県の回答は違いますね。
愛媛県
中四国エリア初の国内線LCC就航となった松山空港。四国では最も人口が多い県ですし、妥当といえば妥当。
今ではピーチも就航しています。
県側の積極的な誘致があったのかもしれませんが、LCC側のアプローチに積極的に答えた結果かなとも感じます。
高知県
立地的に飛行機欠かせない高知県。観光地も十分。しかし人口が少ないのが難点。県がLCCの誘致をしているものの、LCC側の反応が悪いのか積極さは感じません。
情報不足。
宮崎県
九州・沖縄で唯一LCCが就航していないのが宮崎県、宮崎空港。間違いなく佐賀や長崎に比べれば間違いなく需要が見込めるのに、ここまで就航していないのはやはり空港を運営しているのが宮崎空港ビル株式会社だからでしょう。ANAか20%の株式を保有しています。
地方空港で唯一民間主導で空港ターミナルの運営をしているのが寧ろ仇になっているような。
とは言え、ピーチが検討している就航地として宮崎を候補に上げているので、2015年内にもLCCの就航は高そう。
でもやっぱりジェットスターは無理?
まとめ
都道府県によって、LCCに対する対応はまったく異なります。自分の住んでいる近くの空港にLCCが就航していない人は、空港や運営している自治体に問い合わせてみてください。
未だはインターネットで簡単に質問ができる時代。きっと担当者が回答してくれます。
しかし誘致とは言っても色々大変なんですよね。
色々このブログでも書いてきましたが、日本の場合は特に。
諸外国とは余りにも違うことばかり。
とは言え、3年で20弱の空港に国内線LCCが就航しているのは多いと見るべきか、少ないと見るべきか。
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